沖ヨガとは

沖ヨガとは、日本におけるヨガの草分け的指導者である沖正弘師(1921-1985)が、古典的なインドヨガに東西のあらゆる宗教や修行法、日本の伝統文化、武道、東洋医学、民間療法などを組み合わせて体系化したヨガです。

沖ヨガはその特徴から求道ヨガ、生活ヨガ、総合ヨガとも呼ばれていました。アサナ(いわゆるヨガのポーズ)のみでなく、心、身、食、息、生活、環境のすべてを改善し、心身のバランスを回復し、自己能力を開発するヨガのことを差しています。

沖ヨガとは何か、その特徴は何か(龍村修)

沖正弘

沖ヨガのルーツ

沖ヨガのルーツは、戦後に沖正弘先生により結成された日本人国際平和奉仕団にあります。一人一人の心の中に平和心を生まれなければ真の平和な世界は来ないという沖先生の確信からです(沖先生ご自身は出来たばかりのユネスコの最初期の派遣奉仕員として昭和26年にインドに派遣されています)。政治的・武力的な均衡での平和は真実のものではない、という考えをお持ちでした。そうした平和運動を世界に出かけて行うためには、身体が強健で、心は幅広く深く柔軟でコントロール力があり、生活力があり奉仕精神が旺盛で、いかなる事態にも適応できる能力がなければなりません。そういう人材を養成する訓練に最適な訓練法・悟道法を東洋のヨガ・瑜伽に求められたのです。それで、釈尊やジナや各種のヨガを生み出したインドの五大ヨガ行法哲学、そして老子・孔子・陰陽哲学・道教・導引術等を生んだ中国の瑜伽、また自然(神)を畏敬し、その法則に則した生き方を実践することを目指す日本古来の神道や禅を通じて花開いた武道や茶道・華道の様な諸道・諸芸の道の精神文化、また人々を病気やケガの苦悩から救われる為にアジアの伝統的医療術などを統合化し、どこの世界に行っても通用するものとしてまとめ創造されたのが沖ヨガの内容になっています。

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沖ヨガは6つの構成要素から成っています。

第一の特徴は「生命即神」

沖先生は幼少の頃、この子は育つかどうか?と親が心配して出生を役所に届けるのを躊躇するほど身体が弱かったと聞いています。父は天下国家を論じる人々や各宗の宗教関係者や健康法・医療法の関係者と交流が深い方で、日本に来られたビルマ建国の父と呼ばれたオッタマ僧正を自宅に招ける立場の方でした。母は妙好人(在俗念仏者)と呼ばれるほどの方で、何があっても「南無阿弥陀仏」と唱えられておられたということです。そうした精神的環境の中で育った沖先生の幼少からの疑問の一つは「神様」や「仏様」とは何?ということでした。そうした様々な神像や仏像、神職や僧職の方々の姿に接しても疑問が解けなかったのが、ヨガと出会い実践することで、『古来人々が「神、神々」と呼んで畏敬してきたのは「生命」(全てを活かしている力、生命力、生命法則、自然法則、真理)のことだったのだ』、『「仏」は、全ての存在の中からその神性を見出す能力(仏性)なのだ』と悟られたのです。それで沖ヨガの行法哲学は、「生命」に聞くこと、呼吸・氣分・脈を指標にして、ちょうど良い行法の行い方を体得することを特徴としているのです。これにより、様々な神を信奉する結果として起こりがちな宗教的な争い、宗派間の争いを超える教えとされたのです。

第二の特徴は「求道ヨガ」

ハタヨガをルーツにする多くのヨガ(ヨーガ)が、開発者の技術の伝達を中心に普及している「技術ヨガ」に対して、沖ヨガの特徴は求道(真実・道を求める)を中心にしている点です。技術中心のヨガの場合はアサナ技術そのものの形や行い方が決まっているので指導員の形を真似ることが重要であり、いわば指導員に限りなく近くできれば上達した人ということになり、個性を活かすことが難しくなります。また形のABCが作りやすいのでテキスト化しやすく、普及しやすくなります。
求道中心の沖ヨガは、行法を通じてそれぞれの生命と向き合って、自然法則・生命法則(真実)の把握がまず中心ですので、一人一人の生命法則のあり方に特徴が出て個性が開発されて来ますし、他に伝えるにもその人の個性が活かされてきます。各々のポーズ出来具合が即、上達の指標にはなりません。自然・生命の法則(真理)がわかって来るほど生き方が豊かになって行き、古来言われる「悟りや解脱」に近づいて行きます。
沖先生が自身の開発創造したヨガを求道ヨガと呼ばれている理由は、現在世界に普及しているヨガは本来の姿ではない、シャカやジナを悟りに導き、人々を苦しみから解放するあり方のヨガが本来のヨガだとされているからです。それは戦中・戦後のインド滞在中に30以上のヨガアシュラムを訪ねた経験からです。沖先生が自分のヨガの師匠とされている一人はマハトマ・ガンジーであり、沖ヨガ修道場修行スタイルの原点はガンジーアシュラム(セワグラムアシュラム)とされています。

第三の特徴は「十段階」(修行・修養・修業の階梯)

 詳細は別に述べますが、一般にヨガはパタンジャリの八支則で解説されていますが、沖先生は、禅寺での修行、ラマ寺での修行、キリスト教の修道院の体験・イスラム教の教えやダルウィン教団での修行体験等を通じて、禅や密教の悟りの瞑想だけでは、人々が本当に救われる為、真の悟り・救われ・信心の為には不十分と気づかれ、八支則にはないバクティー(祈り・信仰行法=心の放下行法)、ブッディー(仏性啓発行法)、プラサダ(歓喜法悦行法)を加えられました。

第四の特徴は「総合ヨガ」

沖ヨガには総合的・生活的で多彩な行法が有ります。部分専門的なヨガの場合は、その開発者が体系立てたアサナや呼吸法を実践することがヨガをすることになっていますが、沖ヨガは基本ポーズ、浄化法、強化法、修正法、呼吸法、瞑想法、正食事行法、二人組行法・集団行法、ヨガ療法行法・整体指圧行法、武道・芸道などと多岐にわたっており、しかもそれを個性別に生活化することを本旨としています。沖ヨガの一部分のみを見た人がそれを沖ヨガと思って、誤解したことを言ったり書いたりしています。例えば強化法を見た人は、沖ヨガは軍隊や運動部の様なことをしているヨガでしょう?とか、浄化法を見た人は、鼻で吸って口で吐くのが特徴でしょう、とか、ゆっくりストレッチ的にポーズをして鼻で呼吸するのがヨガだ、と思っていた人は、その違いに驚きその様に言います。ヨガ関係の雑誌では、多くのヨガをその強度やスタイルの特徴で初心者向きや中級者向きですと分類しています。まるでエアロビクスやダンスのエクササイズの様に肉体に及ぼす影響を中心に分けているのです。ヨガは身体のエクササイズではないのにそうしています。沖ヨガはそのような分類には入りようがありません。行法の種類が多彩だからです。(行法とは法則を求めて行う行為の意)

第五の特徴は「生活ヨガ」

武道や芸道の様に日本の「道」の文化は、生活に活かされている姿をより本質としていますが、現状のヨガの多くは、お稽古ごとになっていて、そのグループのヨガのポーズを行うことがヨガの実践になっていますが、沖ヨガは各種の行法を通じて、体の法則や心の法則を掴み、自己の生活に活かして、自身の生活そのものをヨガすることを本旨としているのです。諸道の達人は皆似たことを言いますが、それは道を歩むことを大切にしているからです。

第六の特徴は「一人一ヨガ」

例えば各種のポーズや呼吸法もいくつかの特徴がありますが、個性開発を大切にしています。一人一アサナ、一人一呼吸法、一人一食事法、一人一瞑想法であり、それが可能になる原理を説いています。一人一人が自分のヨガを確立して行ける方法と考え方があるのです。個性を活かした生き方をすることが、この世に人間として生まれた価値と考えるからです。

ぜひこれらの考え方と方法を学び活かして、沖ヨガの原点である平和運動、日本人としての特徴を生かし、世界に通じる行法哲学を実践し、自己の心身生活の開発・啓発を行って人類の健康・幸福・平和、さらには全ての生命の平和に貢献しましょう。

 

初代会長:沖正弘師について

初代会長 沖正弘 

 

沖正弘。1919年生まれ。
出生届の関係で、戸籍上は1921年11年8日生まれ。
大阪外語大学卒。
生来、壮健ではなく、幼少の頃より多くの病をかかえ、後のヨガ実践行にて、自他の生命が共に救われる沖ヨガ(沖道)を創造し、世界20カ国以上に沖ヨガ普及活動を展開した。
青年時、軍の特務機関員として、蒙古・中国・インド・アラビアに赴き、東西の医療法を修得。宗教面でもイスラム教、ラマ教、道教、仏教、キリスト教の寺院や修道院での修行体験を持つ。1942年にガンジーとの出会いもあり、日本で最初のヨガ研修会を創立した。

戦後は、平和活動家を志して禅門にも入り、北陸を拠点に全国で人間性回復、救済活動と修行に努めた。また、フィリピン政府に戦犯の身代わり投獄を申し出るも受け入れられず、1951年にユネスコの平和建設国際奉仕団の日本代表として、渡印。医療面や福祉活動面で活動。印パ紛争時に平和説法、難民小屋や救ライ施設の建設にも携わり、大学での講義も行った。シャカ・ガンジーを悟りに導いた行法と哲学がヨガであることを知ってから、まず哲学のさらなる探究に、次に腸がんの診断を受けるに及んで、心身改造の目的で、行法も徹底専心するに至った。1955年に帰国。全国でヨガ活動を開始。報恩奉仕の心の普及に、自ら世界各国を廻り歩き、また多数の若者を海外への奉仕に送り出した。1958年には日本ヨガ協会、ヨガ行法哲学研修会を設置した。1960年以降は、招かれて西欧各地に東洋哲学と医学の講義に赴いた。
誤解を生みだしている健康法的、美容法的、また部分的、習い事的な他のヨガとの区別の為、自らの研修したヨガを求道ヨガ(別名=沖ヨガ)と命名して、1967年、その修道場を三島市澤地に設置した。その後、1970年代には、下田市にも研修所を設置した。

沖ヨガの特質は、ヨガを近代的かつ総合的に解釈していること、及びヨガ・禅・陰陽哲学、東洋医療法と修行法を総合化したユニークなシステムであることで、その中心となっているのが、冥想行法と修正行法である。また、「生命即神」の真理を柱に、自然法則・生命法則を探求修得し・心身生活の全般に活かす観点から、政治、教育、医療、宗教、スポーツ、芸道など各界の指導も行った。

晩年には「全生命は救われなければならない、また必ず救われる」との悟りと信心から、全生命救済活動の一環として、1980年には国際総合ヨガ世界大会を開催し、国内外からのべ8000人が参加した。また1984年には国際セミナー「ライフエンカウンター(生命との出会い)」を開催し、世界20カ国からの参加者を得て、国際的に指導者を養成した。
1985年7月25日、この年のヨーロッパ・サマーキャンプ(スウェーデン、ベルギー、フランス、イタリア各国での夏期講習会)を終えた日に、イタリア、ペザロ市のアドリア海で、入定した。

著書に「冥想ヨガ入門」、「実践冥想ヨガ」、「ヨガのすすめ」、「ヨガ呼吸修正法」、「ヨガによる健康の秘訣」「ヨガによる病気の治し方」等(日貿出版社)、「ヨガ総合健康法」「なぜヨガで病気が治るか」「菩薩道入門」など(竹井出版)、「ヨガの喜び」(光文社)など多数。

 

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